「医療的ケア児」の支援が2021年4月より手厚くなります!!
重症な障害でたんの吸引など必要な「医療的ケア児」とその家族を支援するために、厚生労働省は日中に預かる施設への報酬を2021年4月から手厚くします。
「医療的ケア児」とは?
「医療的ケア児」とは、医療的ケアが必要な子供のことを意味しています。具体的には、経管栄養・気管切開などが必要な子供になり、何らかの医療デバイスによって身体の機能を補っている状態であるということです。
経管栄養
食事のためにチューブを胃に通します。嚥下機能障害などにより、口から食べ物を食べれない場合に、お腹に穴をあけたり、鼻からチューブを通して、胃に直接食事をいれる処置になります。
気管切開
呼吸のための器具を喉に取り付けます。疾患などが原因で口や鼻がふさがってしまう症状がある場合、のどに穴をあけてカニューレ(通気の管)を通して空気の通り道を確保する処置です。
医療的ケア児の多くは数か月程度でNICUから退院し在宅医療へ移行するのが特徴になります。
現在の「医療的ケア児」は2万人を超えている
昨今、劇的な周産期先進医療の進歩により助かる命が増えています。このことは非常に良いことですが、一方で重い障害が残って日常的なたんの吸引や人工呼吸器などが欠かせなくなる「医療的ケア児」も増加しています。
直近のデータでは、全国で2万人を超えている状態になっております。
(2005年のデータでは、全国9987人なので2倍以上増加しています。)
2018年の出生人数は約91万人と3年連続で下降傾向ですが、医療的ケア児は増加しています。
つまり、生まれる子供における医療的ケア児の割合が増加しているのが、現在の日本の状況となります。
医療的ケア児は「大島分類」でいうとどこのカテゴリーに属するのでしょうか?
その回答は、「どこにも該当しない」というのが答えになります。
突如でてきた「大島分類」。
日本では障害児の分類は「大島分類」というスコアを使用して判断しています。
ここからは「大島分類」について紹介します。
大島分類」について
この「大島分類」とは、身体をコントロールする力(座位がとれる・立てるなど)と、知的能力(IQ)がどの程度あるかという2軸で障害レベルを判定しています。
大島分類のスコアは、1~25の範囲で網羅されており、大島分類1~4に該当した場合、「重症心身障害児」になります。
※医学的診断名ではなく、児童福祉の行政上の措置を行うために定義されている。
この分類を基準に子どもの障害の程度が決定し、それに応じた行政の支援内容も決まっていきます。しかし、年々増加している医療的ケア児は「大島分類」でどこのカテゴリーに属しません。
つまり、医療的ケア児は行政の支援もないというのが現状の課題となります。
「医療的ケア児」1人当たりの基本報酬は、自閉症などの一般的な障害児と同じ「820単位:9,296円/日」に設定されています。
※1単位=11.2円(東京の場合)で計算
しかし、「医療的ケア児」は、人工呼吸器を付けていれば、その管理が必要になります。また、動けるからこそ自分で人工呼吸器を外してしまうリスクもあり、見守りは必須です。
当然、人工呼吸器などの医療機器を扱える看護師の配置も必要になります。
それにもかかわらず、一般的な障害児と同じ区分で扱われていたため、受け入れにかかるコストと報酬にズレが生じているのが問題になります。
今回の改定内容のポイント
2021年4月からの改定ポイントは下記3点になります。
下記の内容だけでは足りない部分もあると思いますが、まずは前進した内容になるかと思います。
「見守りスコア」の新設
「動ける医療的ケア児」の見守る度合いを数値化します。
「医療的ケア児用基本報酬」の新設
看護師配置により変動する基本報酬点数になります。
改定前ですと一律9,296円/日でしたが、今回は看護師の配置率により17,382円/日~32,312円/日と大幅にUPしています。
重症心身障害児施設の看護職員加配加算の要件緩和
重症心身障害児施設で、重症心身障害の医療的ケア児を預かる場合の看護職員加配加算の要件が緩和されました。
改定前は、「基本スコア8点以上の医ケア児が5人以上」いることが要件でしたが、
「その施設の全医ケア児の前年度1日当たりの合計スコアが40点以上」と変更。
今回の報酬改定の結果、既存の障害児通所施設の財務状況は改善し、新規事業者も参入しやすくなりました。
今回の改定が、医療的ケア児家庭の救いになること、地域密着で支援できる環境構築につながることを願っています。