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なぜ訪問看護ステーション事業は廃業してしまうのか

なぜ訪問看護ステーション事業は廃業してしまうのか

 

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結論からお伝えすると、訪問看護ステーションが廃業してしまう理由は、

「人材不足」「経営者の経験不足」の2点になります。

 

訪問看護ステーションでは、主として看護師が働いています。

看護師は活躍の場が多く、定着に結びつけるための人件費の高騰や採用コストの増加があり、経営を圧迫していることが挙げられます。また、これらのコストを捻出できない訪問看護ステーションでは、離職が進む、採用ができないなどの問題が発生し悪循環に陥り最終的に廃業してしまいます。

 

それでは、ここからは訪問看護ステーションについて紹介します。

 

 

訪問看護ステーションとは

訪問看護ステーションとは、訪問看護をおこなう看護師や保健師、助産師、理学療法士などが所属している事業所になります。職員は訪問看護ステーションを起点として利用者の自宅や施設へ出向き、状態観察や医療的ケアなどのサービスを提供します。訪問看護サービスの利用には年齢制限はなく、乳幼児〜高齢者まで幅広い方が利用可能です。ただし、サービスを受けるには主治医が作成する「訪問看護指示書」が必要です。訪問看護を実施している機関は、ステーションのほか、病院やクリニック・診療所なども展開しています。

 

「訪問看護指示書」の種類

(1) 訪問看護指示書

◎ 通常使用される訪問看護指示書。

◎ 主治医は訪問看護ステーションに訪問看護指示書の原本を交付します。

◎ 指示期間は、最長6ヶ月までです(記載がない場合の指示期間は1ヶ月)

◎ 訪問看護指示書交付の際、月1回主治医が『300 点』を算定できます

◎ 2カ所以上の訪問看護ステーションから訪問看護を提供する場合は、各訪問看護ステーションに交付することになっています(算定は1回分のみ)

 

 (2) 特別訪問看護指示書

◎ 特別訪問看護指示期間中の訪問看護は医療保険での対応になります

◎ 患者の急性増悪や退院直後などにより、頻回の訪問看護が必要になった場合に 交付します

【介護保険対象の利用者の場合】

医療保険による訪問看護に切り替わります

◎ 特別訪問看護指示書による訪問看護は「訪問看護指示書【上記(1)】」が交付されていることが前提条件となります

◎ 特別訪問看護指示書の交付は原則として月1回で、主治医が『100 点』を算定できます。

ただし、「気管カニューレを使用している状態にある者」「真皮を越える褥瘡の状態にある者」に

ついては、月2回まで交付できます

◎ 指示期間は 14 日間までで、月をまたいでもかまいません。

◎ 急性増悪の症状が改善し、指示期間を訂正していただいた場合の訪問看護は護保険対応に

戻ります。

 

(3) 在宅患者訪問点滴注射指示書

◎ 週3日以上の点滴注射を行う必要を認め、訪問看護ステーションに対して指示を行う場合に交付します(書式は【上記(1)(2)】と共通)

◎ 患者1人につき週1回(指示期間7日以内)に限り、月に何回でも交付できます 。

◎ 週3日以上の点滴を実施した場合、在宅患者訪問点滴注射管理料として、主治 医が『60 点』を算定できます。

◎ IVH(中心静脈栄養)は対象外です。

 

(4) 精神科訪問看護指示書

◎ 訪問看護ステーションが精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)~(Ⅳ)およびその加算を算定する場合に交付してもらう訪問看護指示書です。

◎ 精神科を標榜する医療機関の精神科の保険医が診療に基づき交付し、月1回主治医が『300 点』を算定できます。対象は、精神障害を有する者、又はその家族です

◎ 精神障害を有する者に訪問し、訪問看護基本療養費(Ⅰ)~(Ⅲ)およびその 加算を算定する際には、精神科訪問看護指示書ではなく、「訪問看護指示書【上 記(1)】」を交付してもらう必要があります

 

訪問看護ステーションの役割

住み慣れた地域で自分らしく人生の最期まで過ごすことができるよう、医療、介護、予防、生活支援サービスなどが一体となって地域内で提供できる「地域包括ケアシステム」の構築が進められています。地域包括ケアシステムでは、地域包括支援センターを中心に、医療機関、介護サービス事業所、福祉サービス事業所などが連携し、それぞれの役割を全うしなければなりません。訪問看護ステーションではこの一環として、医療と介護をつなぐ役割が求められます。最近では、医療機関から在宅療養への移行の推進もあり、機能強化型訪問看護ステーションが展開されています。

 

訪問看護ステーションで働いている職種

訪問看護ステーションで働いている人たちは、看護職員(看護師、准看護師、保健師、助産師)のほか、リハビリ職である理学療法士、作業療法士、言語聴覚士や、施設の管理者、事務職員などたくさんの医療従事者が働いています。

 

訪問看護ステーションの課題

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在宅療養へシフトしている状況で、訪問看護の需要が高まってきています。しかし、訪問看護ステーションが提供するサービスの質・量の改善が求められているのも現状あります。下記3点が特に課題であると言われています。

 

1訪問看護師の人材不足
2リハビリ職による訪問看護
3経営者の多職種連携を踏まえたマネジメント能力

 

訪問看護ステーションの経営の難しさ

看護職員数不足

訪問看護ステーションで勤務する看護職員の人員確保の難しさが挙げられます。

特に看護師は売り手市場なので、就業環境が悪ければすぐに他のところへ転職してしまいます。そうなることで訪問看護ステーション自体の運営が安定化されません。

訪問看護ステーションは、圧倒的に小規模事業者が多く、国の基準では1ステーションあたり常勤換算2.5人の看護職員がいれば開業できます。

しかし、常勤換算2.5人で運営してもスタッフの急な休みやイレギュラーな業務にとても対応できず職員が疲弊してしまいます。常に人員を確保できるように環境(雇用条件・認知度など)を準備しておく必要があります。

 

経営の専門家へのアドバイザー不足

訪問看護ステーションは医療の一環という立ち位置ではあるが、「事業経営」というのが前提になります。多角的に事業を展開させるためには相応の経営ノウハウが不可欠となり専門的な見地からのサポートが必要となります。経営コンサルタントや税理士を雇用している訪問看護ステーションは少なく、それが理由で運営が傾き廃業してしまうケースが多いです。

 

今後は訪問看護ステーション同士の合併や新たに訪問看護ステーションを設立したい病院による訪問看護ステーションの買収が増加していくことが見込まれます。

まとめ

  • 看護職員を常に確保するために環境を整えていく必要がある。
  • 経営のプロと二人三脚で事業展開していく。
  • 今後、訪問看護ステーション業界もM&Aが加速していく。

その他情報

訪問看護ステーションの基準の届出受理状況の一例

【東京都】

https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/chousa/13hkijun_tokyo_r0301.pdf

【神奈川県】

https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/chousa/14hkijun_kanagawa_r0301.pdf