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今後の製薬会社と医療市場を分析。今後MRが必要になるスキルは?

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現在、製薬会社でMRとして仕事をしていますが、かなり状況が厳しくなっているのを日々感じます。市場の変化とともに、以前求められていたMRのスキルが不要となり、新しい考え方・新しいスキルが必要になってきています。今後のMRに必要なことを中心にまとめています。参考にしてください。

医薬品市場の変化

1医療品市場動向

日本の医薬品市場は、「明るい未来」は待っていないと日々感じています。様々な報告がありますが、過去5年の日本の医薬品市場の成長率は年平均1.0%で、先進国10カ国で最低水準であると言われてます。米国の調査会社IQVIAが発表した最新の医薬品市場予測レポートでは、向こう5年間の年平均成長率も低く「−3~0%」と予測されています。しかし、世界動向を見てみると国内市場と違う動きを見せます。2018年1兆2000億ドルの医薬品市場が2023年までに1兆5000億ドル市場になり、順調に成長していく市場になります。

 

参照元:調査会社IQVIAが発表した最新の医薬品市場予測レポート

https://www.iqvia.com/ja-jp/institute/reports/the-global-use-of-medicine-in-2019-and-outlook-to-2023

 

国内市場が停滞してしまう要因は、①毎年薬価改定が実施されるようになる②後発品の普及③薬価引き下げ施作の厳格化です。この3点以外の要因も考えられますが、国が打ち出している政策がかなり影響すると考えています。

2製薬会社の現状と今後の流れ

今後の製薬会社は、①海外進出の加速②開発研究の変化が予想されます。むしろこの動きは既に始まっており加速していきます。製薬会社が海外進出する理由は、国内で利益を維持することができないからです。国内で利益を確保できないなら、海外へ進出、自然な流れです。今後、この流れは確実に加速していきます。また、開発研究も低分子医薬品から、バイオ医薬品・再生医療へ変化していきます。この変化の中で課題なのが、「海外での販売販路を持っているのか」「開発力があるか」「適正な人材育成」です。これらに対応できる製薬会社のみが今後生き残っていきます。

3製薬会社に在籍しているMR数は減少傾向

海外進出・開発研究の他に変化しているのがMR数です。MR認定センターがまとめている「19年版MR白書」によると、18年度のMR数は5万9900人で、前年度と比較すると2533人減少しています(5年連続で減少中)。

4製薬会社の今後の開発状況 

実際、各製薬会社の新薬開発状況を調べて見ました。20年前と比べて、生活習慣病系の医薬品が少なってきているのが顕著です。

 

参照元:日本製薬工業協会(通称:製薬協)ホームページ

www.jpma.or.jp

  

製薬会社とMR業務の変化

上記でもお話ししましたが、製薬会社の今後は、「海外進出」「開発研究」「適正な人材育成」が強化されていきます。MRという概念も少しづつ変化しており、グローバルに対応できる、患者目線でディテールできる営業の育成が課題になってきています。

 

1販売情報提供活動ガイドライン運用による行動規制

現在、医療用医薬品に対して販売情報提供活動ガイドラインが厚生労働省から作成され運用されています。ガイドラインの対象は、製薬企業(すべての従業員)や医薬品卸が行う情報提供活動で、委託先・提携先も含まれます。また、製薬会社経営陣の責任に関しても明確化されています。

 

ガイドライン上では、販売情報提供活動の原則を規定しているほか、企業に対して、業務記録の作成・保管などを義務付け、監督部門の設置などの内容も含まれています。不適切なプロモーション(有効性を誇張する・適応外)をなくすのが目的ですが、製薬会社のMR評価に関しても指摘しています。「売り上げ至上主義」の風土脱却を求めています。

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2製薬会社が実施している研修内容の変化

販売情報提供活動ガイドラインが適用になり、かなりコンプライアンスに敏感になっている製薬会社が多くなってきた印象があります。正直、昔はコンプライアンスに緩い業界だっと思いますが、今はできないことの方が多くなってきました。特に顕著なのは、研修内容が大幅に変わった点です。PMS・倫理系の研修が増加し、技能研修(特に他剤比較)が減少しています。以前までは、いかにして他剤比較をして、優劣を訴求して、自社医薬品を処方されるかというのが重要視されていました。しかし、今は、~はやっていけません、~という話法は誤解されますので避けましょうなどと、販売情報提供活動ガイドラインに則った研修内容になっています。

 

3MR業務の変化

・面談内容・説明会の変化

以前までは、各製剤の特徴を伝え、差別化中心の説明会を実施していたMRも多いかと思いますが、現在はNGです。現在は、競合品には触れず、臨床試験を紹介するときは、試験デザインを正確に、詳細に、ネガティブな結果も淡々と、全てをお伝えするスタイルに変化しています。むしろ、会社が用意している話法に則った内容で説明会を実施しなければいけません。

今後の製薬会社で必要とされる人材・スキル

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製薬会社の今後はますます変化し、厳しい時代に突入していきます。それでもMRという仕事は無くならないです。むしろ副作用が伴う業界なので必要な職種です。では、今後どのような人材・スキルを持っている人が必要になるかまとめました。

 

1脱数字!営業という概念を取っ払えるか

数字を要求してくる製薬会社もまだ多くあると思います。しかし、販売情報提供活動ガイドラインでも明記されている通り、「売り上げ至上主義」のMR評価に関して指摘しています。今後は、行動面・定性面の評価を重視してくる製薬企業が増加すると予測できます。MRに求められる能力も数字を作り上げることではなく、如何に論理的に、担当エリアのニーズを感じ取り、周りを巻き込み、解決できるかという能力だと思います。

ちなみに自分が参考にしていたデータは、各行政が作成している「データヘルス計画書」です。これは非常に参考になりました。現状のエリアの課題点・今後の方向性が記載されています。「データヘルス計画書」を読んでからは、先生との面会内容も変わりました。

*検索方法

行政が発表している計画書なので無料になります。

「データヘルス計画書」+「各市町村」で検索するとヒットします。

例えば、データヘルス計画書+世田谷区で検索すると・・・

www.city.setagaya.lg.jp

 

2他職種連携の需要を感じ取れ!市場は明らかに在宅市場にシフトしている。

プライマリケア領域の担当者は避けて通れないのが「在宅市場」だと思います。エリアを見ていても、高度急性期病院→在宅、回復期病院→在宅と、患者さんのコア市場は在宅へとシフトしておりますます増加していきます。そこでポイントになるのは、在宅患者さんをサポートしているケアマネージャー、在宅薬剤師、ソーシャルワーカーなどの職種です。今後、この他職種連携を意識した行動が必要になってきます。エリアの中心の位置に立てるかがポイントです。ケアマネージャーの方は、非常に勉強熱心な方も多く、現場(在宅患者)のリアルな意見交換もできます。

 

3最新テクノロジーを知っておくべき!

今後、最新テクノロジーや広い視野・考え方を持っているMRが求められてくると思います。MRには必要ないでしょ?という意見もあります。また、医薬品の売り上げに直結しない場合もあります。しかし、何処かでヒントになったり、繋がったりします。私も製薬会社でMRをやっている時に「ある事」に気づきました。それは、患者流入パターンが変化している事です(特に首都圏・中心都市では顕著です)。今までは患者さんの自宅・勤務地の近くの病院・開業医に受診するケースが多かったと思います。しかし、今は違います。患者さんが自ら探し、自ら病院を選定できる、インターネット時代です。時代の変化とともに、開業されている先生たちも、患者さんを集客するために試行錯誤しています。時代にあったやり方の自分なりの答えは、「病院検索サイトなどを運用している企業」へのアプローチでした。実際に実施してみましたが、連携することによりターゲット疾患へのアプローチ方法も変わりました。

 

このように広い視野を持ち、時代にあったテクノロジーを組み合わせることで、MR業務の可能性も広がると思います。規制が厳しい時代になっているは事実です。でも、このような状況でも必ず自分にあったやり方・楽しいやり方はあるはずです。それを早めに見つけてください。

 

まとめ

・国内医薬品市場は本格的に停滞時期に突入。製薬会社の海外進出は加速する。

・時代とともに、製薬会社・MR業務が変化してきている。コンプライアンス重視の業界へ移行。

・今後の製薬会社で必要とされるMRは、最新テクノロジーや広い視野・考え方を持っている人材である。