厚生労働省が8月30日に、2018年薬事工業生産動態統計を公表しました。
医薬品国内生産額、2年連続増の6兆9077億円 18年薬事工業生産動態統計
医薬品の国内生産金額は、前年比1864億円増(2.8%増加)の6兆9077億円と発表。これは2年連続増加している結果になります。
医療用医薬品の伸び率
医療用医薬品の伸び率は「2.7%」増加になります。全体で見たら増加傾向になっていますが、カテゴリー別で見てみるとかなり明暗ははっきりしています。
薬効分類別
薬効分類別で見てみると、「その他の代謝性医薬品」:8585億円(8.6%増加)、「循環器官用薬」:8026億円(14.1減少)、「中枢神経系用薬」:7848億円(3.6%増加)という金額順になります。それ以外のカテゴリー前年比率は「腫瘍用薬」:6113億円(38.3%増加)「生物学的製剤」:3567億円(1.6%増加)になります。
対前年比率が減少しているカテゴリー
●循環器官用薬:-14.1%
●消化器官用薬:-6.9%
●感覚器官用薬:-5.1
●ビタミン剤:-4.1%
●ホルモン剤:-11.2%
●アレルギー用薬:-18.4%
●抗生物質製剤:-25.8%
*上記以外にも減少しているカテゴリーはあります。
全体の医療用医薬品は2年連続で伸びている結果になっていますが、プライマリ領域の停滞(循環器系の薬剤)分を、高薬価の新薬が補った形になっています。やはり長期収載品が多い製薬会社は苦戦をしているという結果が推測されます。今後も長期収載品の後発品化・利益が確保できる分野への研究開発の投資・海外への投資が進み、この構図は加速していく気配を感じます。
医療用医薬品以外の伸び率は?
①その他の医薬品の伸び率:「3.0%増加」②一般用医薬品の伸び率:「3.0%増加」③配置用家庭薬の伸び率:「-0.3%減少」になります。
医薬品剤型分類別生産金額
大幅に増加しているが、「注射液剤」:21.0%増加、「エアゾール剤」:7.5%増加になります。逆に減少しているのは、「坐薬」:-20.6%、「丸剤」:-10.7%、「硬膏剤・パップ剤・パスタ剤」:-8.5%です。
剤型に関しては、先発医薬品メーカーも力を入れていますが後発品メーカーも力を入れている分野です。
医薬品主要国別輸出金額
国内製薬会社は海外進出に力を入れている時代です。2017年・2018年分を上位4カ国でまとめて見ました。
*()内は全体の構成比率になります。
2017年:アメリカ(15.6%)、韓国(21.0%)、中国(17.3%)、台湾(9.8%)
2018年:アメリカ(22.0%)、韓国(19.8%)、中国(14.9%)、台湾(12.9%)
このデータ通り上位4各国(アメリカ・韓国・中国・台湾)で医薬品輸出金額の70%は占めています。この関係性は昔から続いていますが、韓国・中国の構成比が落ち込んでいるのが気になります。今後、アメリカ・台湾は順調に拡大していくと考えれますが、韓国・中国に関しては予測ができません。製薬会社はどの国をターゲットにするかがポイントになってくると思います。
余談ですが、医薬品輸出金額でトップの分野別構成比(19.2%)は、「その他の腫瘍用薬」になります。「その他の腫瘍用薬」分野での上位5カ国は、韓国・アメリカ・台湾・フランス・英国になります。重要な分野でも韓国が上位取引国になります。
製薬会社にとっては、避けては通れない「国」なのかもしれません。
まとめ
・医薬品国内生産額は2年連続で上昇している。
・薬効分類別で見ると、プライマリケア領域は苦戦している(要因:別の分野への投資・後発品化など)。
・長期収載品を多く保有している製薬会社は今後も苦戦が続く。
・海外輸出ではアメリカ・台湾が好調だが、韓国・中国が苦戦。これからもっと不透明な時代に突入していく。