最近、医療従事者なら良く耳にする言葉、「在宅医療市場の拡大」。
これからの訪問診療クリニックの経営で必要になってくるポイントを
実際に訪問診療クリニックに常駐している立場から定期的に紹介していきます。
まずは「在宅医療」の定義について紹介します。
- 在宅医療とは?
- 在支診の基準
- 機能強化型在支診の基準
- 連携型:10施設未満の診療所(200床未満の病院を含む)が連携し、所定の設置基準を満たす
- 在宅医療の診療報酬(主なもの)
- 在宅患者を紹介してくれるポイント
在宅医療とは?
在宅医療とは、患者さんの自宅や施設(老人ホーム等)に医師が訪問し診療を行うことです。診療形態としては、「訪問診療」と「往診」の2つがあります。
訪問診療とは?
訪問診療とは、計画的な医療サービス(診療)を行うことです。医師が1週間ないし2週間に1回の頻度で定期的に訪問し、診療・治療・薬の処方・療養上の相談・指導などを行っていきます。また、患者さまやご家族の方からご相談を受けた時点で、これまでの病歴、現在の病気、病状などを詳しく伺うとともに、関係医療機関などから情報収集を図ります。その上で、どのような治療を受けられたいか、ご家族の介護力や経済的な事情なども詳しく伺いながら、診療計画、訪問スケジュールをたてていきます。
往診とは?
往診とは、通院できない患者さんの要請を受けて、医師がその都度、往診を行います。定期的な訪問診療とは異なり、突発的な病状の変化(緊急性が低く、救急車をよばないレベル)を対応する処置などを行います。
特に訪問診療クリニックの経営においては、「集患」が大切になります。
「集患」=「在宅患者さん集客」=「他施設との連携・紹介」
「訪問診療」「往診」ともに医療機関から原則16㎞以内が在宅医療の診療範囲になりますので、該当している範囲の医療関連施設との密な連携が必要になります。具体的には、基幹病院・訪問看護ステーション・居宅介護支援事業所などとの連携になります。
次に訪問診療クリニック(在宅療養支援診療所)を開業・運営していく上での必要条件などを紹介します。
在支診の基準
- 診療所であること。
- 患者を直接担当する医師・看護師が、患者及びその家族と24時間連絡がとれる体制を確保すること。
- 患者の求めに応じて、24時間往診が可能な体制を確保すること。
- 担当医師の指示のもと、24時間訪問看護のできる看護師あるいは訪問看護ステーションと連携する体制を維持すること。
- 緊急時に、連携する保険医療機関において検査・入院時のベットを確保し、その際に円滑な情報提供がなされること。
- 患者に関する診療記録管理を行うのに必要な体制が整備されていること。
- 地域において、介護・福祉サービス事業所と連携していること。
- 年に1回、在宅で看取りした数を、地方厚生(支)局長に報告すること。
機能強化型在支診の基準
- 在支診の設置基準を満たしている。
- 往診を担当する常勤医師が3名以上在籍。
- 過去1年で往診10件以上、看取りの実績が4件以上ある。
連携型:10施設未満の診療所(200床未満の病院を含む)が連携し、所定の設置基準を満たす
- 在支診の設置基準を満たしている。
- 連携の施設全体で往診を担当する常勤医師が3名以上在籍。
- 連携の施設全体で、過去1年で往診10件以上、看取り実績が4件以上である。
- 各医療施設それぞれに、過去1年の往診が4件以上、看取り実績が2件以上である。
- 24時間直接連絡がとれる連絡先電話番号等を一元化する。
- 連携の施設間で患者の診療情報共有のため、月1回以上の定期的なカンファレンスを実施する。
在宅医療の診療報酬(主なもの)
往診料 7,200円
「深夜往診加算」
機能強化型在支診(病床あり)の場合 +27,000円
機能強化型在支診(病床なし)の場合 +25,000円
上記以外の在支診の場合 +23,000円
在支診以外の場合 +13,000円
在宅患者訪問診療料 1日あたり8,330円
同一建物居住者以外で、1患者1医療機関として算定する場合、週3回まで。
「在宅ターミナルケア加算」
在宅で死亡した患者(往診又は訪問診療後、24時間以内に在宅以外で死亡した患者を含む)の死亡日および死亡前14日以内の計15日間に2回以上の往診又は訪問診療を実施した場合に加算
機能強化型在支診(病床あり)の場合 +65,000円
機能強化型在支診(病床なし)の場合 +55,000円
上記以外の在支診の場合 +45,000円
在支診以外の場合 +35,000円
在宅時医学総合管理料(月1回)
機能強化型在支診(病床あり)の場合 54,000円
機能強化型在支診(病床なし)の場合 50,000円
上記以外の在支診の場合 46,000円
在支診以外の場合 34,500円
在宅患者を紹介してくれるポイント
患者を紹介してくれるケアマネジャー、訪問看護ステーション、MSW(医療ソーシャルワーカー:社会福祉士や精神保健福祉士など)の専門職には、必ず患者さんの状況についてタイムリーに報告相談連絡をして、パートナーとして付き合っていくことが大切になります。
専門職の信頼を獲得することで新たな紹介患者が生まれていきます。
次回からは訪問診療クリニックの経営支援の業務について紹介していきます。
経営支援の役割は、支援先のクリニックに常駐しながら現場のマネジメント体制を作り、クリニックの収益向上の支援をします。
クリニック運営の柱を担うといっても過言ではない存在です。
下記に掲載した業務内容は一例になります。
- スタッフマネジメント
- 経営分析
- 事業計画/予算計画の作成
- 労務、総務、経理など管理業務全般
- 行政手続き
- 患者さんを増やすための地域医療者や施設への訪問/PR活動